僕とミニラの対立と和解までの記録

 

 

 

突然だが貴方は、ミニラという怪獣を知っているだろうか。

 

 

 

ゴジラ」は、まあ日本人なら誰でも聞いたことくらいはあるだろう。

1954年の上映から約65年、今なお新作が作られ続ける、まさに「王」と呼ぶのに相応しい怪獣だ。

 

 

 

ミニラは、1967年公開のシリーズ第8作『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』にて、ゴジラの「息子」として登場した怪獣である。

 

 

 

世界の大スターゴジラの「息子」を名乗るとは、大きく出たものだ。将来有望で、ゴジラに似てカッコいい怪獣に違いあるまい、と普通は思う。

 

 

 

だが、実際に出て来たのはこれだ。

 

 

 

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これだ。

ミニラ2005 ゴジラ ファイナルウォーズ ムービーモンスターシリーズ



 

 

 

 

これだもの。

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とんだバケモノを生み出してくれたものである。

 

 

 

幼児のような体型と老け切った顔のコントラストが最高にキモい。生え揃わない歯、顔のシワ、全身のブツブツ、妙に人間っぽい手指の造形、その全てがキモさに集約し昇華されている。

 

 

 

しかもこいつ、3作品くらいぶっ通しで登場するレギュラー怪獣である。こんな奴が出てくる映画を90分×3作品=270分も見なければならないのかと思うと、昭和ゴジラシリーズを順に観進めていた僕は頭痛がしたものだ。

 

 

この記事は、僕とミニラの出会い、衝撃、苦悩を描いたドキュメンタリーである。ショッキングな表現が多々使われているので、心臓の弱い方やミニラファンの方はブラウザバックをお勧めする。命の保証は出来ない。

 

 

 

だが、ミニラが好きな奴なんて本当にこの世に存在するのだろうか……

 

 

 

ここからはミニラの登場作ごとに、奴のおぞましさを振り返っていく。覚悟を決めろ。

 

 

 

『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)

怪獣島の決戦 ゴジラの息子

ミニラの気味悪さが一目でわかる凶悪なパッケージ

 

記念すべき、いや忌むべきミニラのデビュー作である。

 

 あらすじ
南太平洋の孤島ゾルゲル島で行われていた気象コントロール実験・シャーベット計画が、謎の妨害電波を受け失敗し、島は異常高温に見舞われてしまう。妨害電波の発信源だった巨大な卵からミニラが誕生し、電波を察知した親ゴジラゾルゲル島に上陸。ミニラを狙うカマキラスや、クモンガとの戦いが開始される。

ゴジラ・ストア https://godzilla.store/shop/e/e108/ より

 

 

 

僕がこの映画を観たのは、仕事を終え、家で松屋の牛丼を食べている時だった。僕は牛丼屋の牛丼とかジャンキーなものが結構好きなのだ。

 

だが映画がミニラの登場シーンに差し掛かった時、僕は牛丼を吐き捨てたくなった。

 

奴は生まれ落ちたその瞬間からキモい。キモさの極限を目指して作られたとしか思えない。生まれた直後は巨大な人間の赤ん坊のようなフォルムをしているが、もう顔もキモいしぬめりにまみれた身体もキモい。おまけにふにゃあふにゃあと情けない声を出し腐りやがって、「私はか弱い生き物です助けて下さい」とこちらに訴えているようだ。生きることを舐めてるんだな。つくづく食事中に観るものではなかった。

 

 

生まれてすぐカマキラスの群れに襲われている、という状況に一瞬同情しなくもないのだが、ブヨブヨと突き回される姿がとにかくキモいので、すぐにミニラへの哀れみは消えてカマキラスの応援をしていた。

 

 

この場面ではゴジラが助けにやってきてことなきを得るわけだが、ここでも奴はあろうことかゴジラに向かって「プァプァ(パパ)」と呼んでその場を去ろうとするゴジラに追いすがるわけだ。

別にゴジラは子育てしようなんて思ってないのに。生きてるだけで助けてもらおうなんて傲慢なんだよ。外見だけでなく中身まで腐りきってやがる。

 

 

そもそも、ミニラがゴジラと同種族なのかさえ怪しいもんである。

ゴジラはミニラの、助けを求める特殊な電波に呼応しただけであり、それまで卵を守っていたわけではない。母親らしきゴジラもいないし、ミニラの出自は謎に包まれている。

それになにより、このミニラが成長したところでゴジラになるとも思えない。どうしたってブサイクなままだろう。

 

 

…だがブサイクといえば、残念なことに今回のゴジラもブサイクなのだ。

ゴジラは映画の度に着ぐるみが作り直されているが、今回のゴジラは多分ゴジラ映画史上最強のブサイクだ。

 

怪獣島の決戦 ゴジラの息子 東宝DVD名作セレクション

 ゴジラの息子』版のゴジラ。豚鼻と顔のイボイボがかなり…………うん

 

 

何故ゴジラがこんなにブサイクになってしまったか。理由は色々とあるんだろうが、僕はミニラとの血縁を示すため、ミニラの顔の造形にゴジラが引っ張られたのではないかと勘ぐってしまうのだ。

 

 

もしこの推測が当たっていたら、これは只事ではない。ミニラはその存在のために、神聖なるゴジラの造形まで変えてしまったのだ。

 

変えられたのは造形だけではない。あの核や災害の象徴として不気味なリアリティを持って描かれていたゴジラが、こいつのためについに単なる「お父さん怪獣」にまで貶められてしまった。これは到底許されることではない。俺はこいつをゴジラの息子とは認めないぞ。絶対に。

 

 

 

 

 

 

話が逸れた。

 

 

その後、卑しくもゴジラの庇護下に入ったミニラは、ゴジラに甘え放題の一方、人間のサユリにうつつを抜かしたりとやりたい放題である。見境というものがないのか。

ちなみにこの辺で人間の主人公チームは熱病で全滅の危機に陥っており、対照的な姿が余計に「呑気なことやってんじゃねえ!」とこちらを腹立たしい気持ちにさせるのである。

 

 

その後もカマキラスに負け、後半現れるクモンガには糸でぐるぐる巻きにされたりと、一つも良いところがない。しかもその度にゴジラに助けてもらっているのだから、情けないったらありゃしないのだ。

 

 

 

……まあ一応公平を期すために、ミニラの活躍も記しておこうか。ゴジラのピンチに呼応して、今まで吐けなかった熱線を吐いてゴジラを助けた。以上。

 

 

クモンガを倒し、大雪のゾルゲル島に取り残されたゴジラとミニラは、2体抱き合うようにして冬眠に入ったのだった。ここで、ゴジラ一体だけなら十分島から脱出出来ただろう事は記しておかねばなるまい。最後まで足を引っ張りやがって。

 

…まあこのラストシーンは、映画内で徐々に育まれていった2体の親子関係を象徴するようで、嫌いではないが。

 

 

 

 

 

 

怪獣総進撃』(1968)

 

怪獣総進撃

ミニラ3部作(今勝手に名付けた)の2本目の作品である。とはいえ奴の出番は今回それほど多くないので、ミニラを意識せずに観ることができる。あんしんあんしん。

 

 あらすじ
20世紀末、国連科学委員会は小笠原諸島のとある島に怪獣ランドを建設。ゴジラをはじめとする怪獣たちを一堂に集め、平和裏に管理していた。だが、怪獣ランドに謎の毒ガスが充満。その直後、怪獣ランドの怪獣たちは世界各地を襲撃し始めるのだった。国連科学委員会はキラアク星人の地球征服計画を突き止め、新鋭宇宙艇ムーンライトSY-3を発進させ、月にあるキラアクの怪獣操縦装置の奪取に成功。地球怪獣連合の反撃が始まる。だがキラアク星人は地球にキングギドラを送り込み、形勢逆転を狙うが・・・。

ゴジラ・ストア https://godzilla.store/shop/e/e109/ より

 

 

 

一体何をどうしたのか、怪獣たちが人間の管理下に置かれているというぶっ飛んだ設定をスタートからかましてくる本作。

怪獣たちが宇宙からの侵略者キラアク星人に制御され街を破壊する…というシナリオなのだが、ミニラは洗脳されず街の破壊には参加しない。

調べたところによると前作でゴジラを呼んだ特殊な電波(機械や通信をおかしくする)のおかげらしいが、弱くて使い物にならないとキラアク星人が思っただけじゃないか???

 

 

 

前半の目玉である街の破壊シーンがないため、今作のミニラの出番は、怪獣たちがキラアク星人の制御下から逃れた後、キングギドラとの決戦に臨むラスト15分に集約されている。

 

 

あろうことか奴は1番弱ぇくせに決戦の地に一番乗りしてくる。この時の僕の絶望たるや、皆様の想像に余りあるところだ。やる気だけではどうにもならないこともあるんだぞ。

まあこの後すぐゴジラが続いてきたのでよかったのだが。

 

 

 

さて肝心の戦闘はといえば、今回もいつもの通り、戦うゴジラたちの周りでワタワタしているだけである。

サッカー中継見てるとたまに映ってるサポーターぐらいの存在感しかない。

 

 

 

それだけならまだしも、戦いで弱ったキングギドラにトドメを刺すのはこいつなのである。痛い思いをせず美味しいところだけかっさらうとは、やはり性根が腐っているんじゃないか。

 

 

 

ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969)

ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃



あらすじ
鍵っ子で、いじめられっ子の一郎少年は、発明おじさんの作った玩具で遊ぶのが唯一の楽しみ。その玩具で遊んでいるうちに、夢の怪獣島に誘われるが、そこで一郎のお気に入り怪獣のミニラがガバラにいじめられているのを知る。だが、ゴジラの特訓を受けたミニラは果敢にもガバラに立ち向かおうとする。そんなある日、一郎は逃走中の強盗に拉致されてしまうのだが・・・。

ゴジラ・ストア https://godzilla.store/shop/e/e110/ より

 

 

 

 前回が『怪獣総進撃』だったのに今回『オール怪獣大進撃』とは、ライダーの春映画並みにオールスター集結しやがる。味を占めたのか?

 と思いきや、この『オール怪獣大進撃』は怪獣のシーンがほぼ使い回しの再編映画で、怪獣が集結するのも映像流用の都合、といった感じである。

 そのため登場怪獣を見ると全9体(大ワシも入れると10体)とかなり多い感じだが、実際は殆どの怪獣が過去の映像を使い回しての登場である。

 

 

 しかしながら、この映画においても新撮が行われた怪獣が存在する。

 主役であるゴジラ、今回初登場のガバラ、そしてなんとミニラである。

 

 

 

 まず説明しなければならないのは、今回の世界観である。今回の舞台に怪獣は実在せず、主人公一郎の空想の産物ということになっている。おそらく我々の世界と同じく、ゴジラが映画として上映されている世界なのだろう。 

 

 

 いじめられっ子の一郎は夢の中で怪獣島に行き、ミニラと出会う。一郎は、弱っちいミニラに親近感を抱いていてお気に入りらしい。ミニラが好きなんて奇特なヤツだと思うが、まあ仕方ない。

 

 

 しかしなんとこのミニラ、人間の子供サイズで言葉まで喋る。そうしてゴジラと怪獣たちの戦い(流用映像の部分)を一郎と一緒に観戦するわけだ。

 

 

 

 つまり、今作のミニラは映画の縦軸を構成するナビゲーターの役割を担っており、実質の主役と言っていい。マジかよ。こんな映画絶対に観れないね。絶ッ対。

 

 

 

 

 

 

 

 ………絶対………………観てやらないね…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だろうか、この気持ちは。

 

 

 

 

 

 

 

 

初めはあんなに抱いていたミニラへの憎しみが、今は薄れているのを感じる。

 

まさか、ミニラとの付き合いが長くなって、愛着が湧いたとでもいうのだろうか。

 

 

多分、ミニラが喋るようになったせいだろうな。実際に彼の状況をセリフで説明されると、デカい父親を持って大変だな、とか、弱いけど戦わないといけないなんて辛いな、という気持ちになってきてしまうのだ。

 

 

 

着ぐるみを改修されて顔もまあまあ可愛くなったし、そろそろ許してやるべきなのかもしれない。ミニラだって、望んでゴジラの息子になったわけでもなければ、望んであんな姿に生まれたわけでもないじゃないか。

 

 

 

 

僕は、「子供の友達」という立ち位置のキャラに弱い。歳を食ったせいか、それとも中身が子供のままということなのか、とにかくすぐにジンときてしまう。なのでこの映画の雰囲気が結構好きな感じなのも、ミニラの評価に作用しているんだろう。

 

 

 

この映画のミニラを見ろ。彼は一郎の友達として立派に振る舞っているし、一郎の目の前でガバラに立ち向かっていった。その姿は一郎を勇気づけ、誘拐犯にもいじめっ子にも負けず戦った。

 

 

なんとも立派な怪獣ではないか。誰もミニラの事を笑うなどできまい。ミニラは少年たちの友達となったのだ。

 

 

 

 

 

まとめ

正直「ゴジラの息子!!」というデカい看板引っ提げるデビューの仕方はまずかった気がするが、その後の2作でミニラだけの立ち位置を確立したように思う。これ以降ミニラの出る映画がないのは残念だ。もう少し彼の姿を観たかったのだが…………ん?

 

 

 

 

ゴジラ FINAL WARS』(2004)

ゴジラ FINAL WARS

 

どうやら2004年のこの映画にもミニラが登場しているらしい。そこそこ出番もあるようだ。

この映画7年くらい前に観たんだが、ミニラいたっけか。全く記憶がない。

 

本当ならすぐにでも視聴を開始したいところだが、今僕は公開順にゴジラシリーズを追っている身。『FINAL WARS』にたどり着くにはVSシリーズ、ミレニアムシリーズを観た後でなければ。

この映画については、視聴後にここで追記する事としよう。ミニラ、少し待っていてくれよ。